「さかな」が「ちゃかな」になってしまう。「すいか」が「ちゅいか」になってしまう。そんなお子さんのことで悩んでいるご家族は少なくないと思います。
今回は、私が実際に訪問支援したAちゃん(幼稚園児)のさ行・ざ行の構音障害のケースをご紹介します。約5ヶ月間の訓練で、どのように変化していったかをお伝えします。
最初の状態(初回評価)
初回の評価では、以下のような置換がみられました。
- さ行(さ・し・す・せ・そ)→ ちゃ・ち・ちゅ・ちぇ・ちょ に置き換わる
- ざ行(ざ・じ・ず・ぜ・ぞ)→ じゃ・じゅ・じぇ・じょ に置き換わる
また、舌先の動きにやや不器用さがみられました。これは機能性構音障害と呼ばれるもので、聴力や口の構造に問題はなく、発音の習得がうまくいかなかったタイプです。
アプローチ:ストローで「風の音」を出す
最初のアプローチとして、ストローを使って「s(スー)の音」を引き出す方法を試みました。「風の音を出してみて」と伝えながら、ストローに息を通して摩擦音を体感してもらうのです。
Aちゃんはこの方法がすぐにできるようになり、自宅での自主練習(自主トレ)として取り組んでもらうことにしました。
訓練の経過
訓練開始から約1週間後:「スタート」という単語でスに近い音が出はじめました。お母さんからも「時々それっぽい音が出てきた」との報告があり、手ごたえを感じた瞬間でした。
約2週間後:スの成功率が上がってきました。特にささやき声のほうがうまくいくことがわかったため、まずは小さな声で練習することを続けました。
約1ヶ月後:語頭のス(単語の最初のス)の正答率が向上。キーワードとして「スープ」という言葉で有声音でも成功できるようになりました。
訓練を嫌がりはじめた時期
順調に見えた訓練でしたが、約2ヶ月後に転機が訪れます。訪問するとAちゃんがコタツの下に潜ったり、キッチンに逃げたり…「もうこなくていいよ、おうちで練習してるから」と言うようになったのです。
これは実はよくあることです。「うまくできていない」という自覚が出てきて、できないことをやるのが嫌になってくる時期です。無理に続けても逆効果になるため、自宅でも無理をせず様子を見てもらうようにお伝えし、帰省をきっかけにしばらくお休みしました。
再開後〜終了へ
年明けに訪問を再開すると、「す」を含むすごろくなど遊びの中に発音練習を取り入れるようにしました。Aちゃんも嫌がらず取り組めるようになり、さ行の明瞭度は大きく向上していました。
嬉しいことに、幼稚園の先生からも「お話が上手になってきましたね」と言われたとお母さんが教えてくれました。
その後、サ行の発音はほぼ完成。ざ行もときどき成功するようになり、成長とともに自然に整っていくと判断して、終了の方向となりました。
このケースのポイント
- ストローを使った視覚・感覚的なアプローチが効果的だった
- ささやき声から始めることで成功体験を積み重ねた
- 嫌がる時期は無理をしないことが大切
- 遊びの中に練習を組み込むと取り組みやすい
- ざ行はさ行の完成後に自然と整ってくることが多い
お子さんの発音が気になる場合は、まず言語聴覚士に相談してみてください。早めに気づいて関わることで、Aちゃんのように短期間で大きく変化することもありますよ。


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